2.新しい恋とさらなる負担
彩花が「ムダ毛処理をどうにかしたい」と思い始めた頃、彼女の生活には新たな変化が訪れていた。
大学時代の友人が開いてくれた飲み会で知り合った男性・達也(たつや)と、交際をスタートさせたのだ。
普段は温厚で優しく、仕事への真面目さも感じられる達也に、彩花は初対面のときから好感を抱いていた。
そんな彼と徐々に距離を縮め、正式に「付き合おう」という言葉を交わしたときは、一人暮らしの部屋で思わず小さくガッツポーズをしてしまったほど嬉しかった。
しかし、新しい恋が彩花にもたらしたのは、ときめきだけではなかった。
「せっかく好きな人ができたのに、こんなムダ毛だらけの姿なんて絶対に見せられない!」
彼女の中でそうした焦りにも似た気持ちが強くなっていく。
それまでも仕事やプライベートでムダ毛処理に追われてきた彩花だが、デートや彼とのお泊まりなど、今までとは違うシチュエーションが増えたことで、ますますムダ毛ケアが負担に感じられるようになるのだった。
最初の頃は「できるだけ時間をかけて、きちんと処理すれば大丈夫」と考えていた彩花。
実際、デートの前日は入念にお風呂で腕や脚、脇まで丁寧に剃っていた。
しかし、どうしてもデートの直前には「もしかして剃り残しがあるかも」「昨日の処理から少し生えてきていないかな」と不安になり、朝の短い時間を使ってムダ毛チェックをしてしまう。
それはまるで試験前に何度もノートを見返すようなもので、余計に緊張を募らせる結果になっていた。
さらに、男性にはなかなか理解されにくいが、剃刀負けや肌荒れなどのトラブルも深刻だった。
念入りにシェービングしても、何度も肌に刃を当てるうちにヒリヒリとした痛みが残ることも多い。
彩花は「ムダ毛がある状態」と「肌が赤く荒れている状態」どちらの方が嫌なのか、判断できないほどのジレンマを感じながら、一人鏡の前で落ち込んでしまうこともあった。
それでも好きな人には常に綺麗な姿でいてほしいと思われたいし、何より自分自身がそう望んでいる。
「いつも綺麗でいたい」「可愛いって思われたい」という気持ちは、恋をしていれば誰しも抱くものだ。
彩花もその想いを日々感じながら、忙しい合間をぬってはムダ毛の処理に励んでいた。
しかし、その努力は決して小さな負担ではない。
仕事が終わってからのデート、さらに残業が続く平日など、限られた時間の中で「完璧」に近づけることがどれほど難しいかを痛感する毎日。
せっかくのデートを思う存分楽しみたいのに、頭の片隅には「ちゃんと処理できてるよね?」「肌荒れてないかな?」という不安がつきまとい、心の底からリラックスできない自分がいた。
そんな日が続きながらも、彩花は「自分のケア不足で彼を幻滅させたくない」「もっと積極的に彼との時間を楽しみたい」という思いを強めていく。
そして、恋が進むほどに高まる「いつも綺麗でいたい」という気持ちが、彼女を次の行動へと駆り立てていくのだった。